われら宇宙へ飛びたてり/兄妹短歌

 


ようこそ! 兄妹(あに・いもうと)短歌へ

これは2025年に発行した兄妹短歌本「われら宇宙へ飛びたてり」の再録




兄妹の花の香いのあまい蜜ふたりで満ちた小さな宇宙





僕らは睡るしろい繭  結んだこの手は朝まで一緒





寝台は方舟に似てる僕たちを遠くへ連れだす宇宙船にね





僕らには秋は来ないよ永遠に泥濘の春乳白の檻





あしひきの峰を想いて我下る地に我を呼ぶ比翼の声よ





横顔はオーダーメイド神様はいない世界は兄さんと僕






名をくれたお前の微笑いがおれの幸福護るよたとえ世界を棄てても





愛と心臓、たっぷりの砂糖スパイスは要らないあとは蕩けあうだけ





魂よ比翼連理なるは新世界連理の枝でわれらは出逢う




白百合を君に捧ぐよ永遠となれあなたの外套羽織って町へ




暖炉の火あたたかな祈り宿らせた思いだすのは君の横顔




寝物語わたしの知らない世界を語る灰いろをしたあまいまなざし (わたしだけ!)




雛鳥よお前と生きるためならば この世界さえ惜しくはないよ




知っている僕を見あげるお前の眼きらきらひかり世界をひらく




魔法使いもしも出逢えたら尋ねてみよう僕らの魔法は何処から来たのか




知らないよあなたに出逢って生まれたんだよ僕は妹、きみのいもうと




君のなら嘔吐すらもまぶしく思う世界に落ちたひかりは叫び




混じりあう愛。依然、境界だからなに それを踏破しもっと向こうへ




兄さんがつくる朝食、微睡みから僕を目覚めさせる音





愛してるたった五音が蕩かすこころ 知っているよと僕は微笑む





ふたりきり満ちた世界の湖満ちる泡沫くだけずわれらは微笑う






五十音の兄妹(あに・いもうと)短歌









 赤い弓林檎の谷を軽やかに渡る鵲何処までも飛べ 






 戒めの縄を破りて我は行く明日待つ君の隣こそ心







 宇宙船おれたちは翔ぶ何処までも海空大地の果てより向こう







 描く雲僕らのかたちに似ているね微笑うお前の横顔をみる







 追い縋る必要などない此処にある我らは共にしひとつの心臓







 杜若、皐月の花に映ゆる蒼  虹の麓でとわに微睡む







 君がため我羽搏かん果てまでも劈く雷鳴君を想ひて







 朽ちてゆく墓石なぞる指の象牙きっと一緒と君は微笑む







 蹴飛ばしてわれらは進むこの世界なにが健全じぶんで決める







 混沌は妹の眼だ兄がみる黄金いろしたまあるい旋毛







 さようなら永遠に知らぬはその台詞何にも別てぬわれらは世界







 しろい愛心臓撫でる指触れる駆ける矢が微笑ういってらっしゃい







 彗星の駆けるすがたに君想うわれらの友よ忘れじの火よ







 背をたどる あなたの影を踏み歩くそうすればきっとはぐれないでしょう







 それ以上話さなくていい沈黙の奏でる愛に耳を済ませろ







 辿り着くかならずふたりおなじ場所忘れる筈ない心臓の音

 






 血と愛はおんなじいろだ心臓も僕らが刻む異星のリズム







 紡ぐ糸ひろがる夕陽、失楽園 宇宙はどうして? 繭に似ている







 天駆けるわれらの軌道紡ぐ糸 微笑のモイラよ僕らをみてて







透徹のひかりをみろよ心臓をぴたりとあわせわれらはひとつ







 何度でもその手をとろう離れてももう一度また 繋げばいいさ







 人間をやめてしまおうわかってる僕らを隔つ世界はいらない







 ぬいぐるみ抱きしめた夜、ありはしないだっていつでも君がいるもの







 猫の声細い糸震え揺らぐ眼が実存越えてゆめでも逢おう







 野苺の酸味に眉を顰めたあなたくしゃくしゃになった顔が愛しい







 葉が落ちるただそれだけの秋はない魔法をかける僕らは逃げる







 広場から宇宙へ飛ぶよ手を繋ぎ選択と自由噛みしめながら







 ふたりなら何処へでもいける? くだらない 君さえいればここは宇宙ね







 平穏をずっとつづけるそのために誰を踏んでも構いやしない







 他にないこの心臓の音楽は僕たちだけが奏でる歌だ







 魔ものなど恐れるにあらずふたりなら絶対不可侵僕らの区域







 みずからの意思で名乗ったあにの文字 いもうと見詰める愛はまなざし






 無限の眼、脣微笑う愛が咲く。せーので一緒に蕩けあいましょう







 瑪瑙石ぱかりと破れた層といろ 滴る炎に僕らもなろうね







 戻らないあなたたちの星はもう要らない僕らは行こう静かなところ







 矢が駆けるようにふたりで駆動したい機体はきっとひとつでいいね






 ゆらゆらり揺れる波音弛む脣 君と眺める海はうれしい






 夜が来たふたりの楽園寝台へ沈むこの舟で星へ飛びたつ







 爛々とひかる愛してその息吹握りしめた指やわい感触







 理解など必要だろうかこんなにも近くて遠い君はいとしく







 縷々と死々 巡り逢いてはまた離れ 今、掴むぜハッピーエンド







 蓮華微笑読んで浮かんだ君のこと言葉は要らぬ鼓動があれば





 瓏々と響く硝子は永遠だ蓄音機よりも貝殻よりも







 わからない、いったい何が奇異なのか。言えるものなら教えてご覧





ふたたび、兄妹(あに・いもうと)短歌





普通とは逃れられないまなざしだ はやく宇宙船に乗り込みたいな





心臓のあまやかな赤を見詰めてる僕らの鼓動よ一緒に巡れ




君をみる世界はすべて君になるこの時間だけが俺の永遠





蜂蜜はお前に似てる金の髪梳いて遣るからこっちへおいで






兄さんは世界を知ってる僕の知らないだけどね僕はそれでいいんだ




盲目よそれがいけないなぜなのか? 知ったって僕は変わらないのに




ああ嫌い喧しい世界黙ってろはやくふたりで完結したい




最低とつぶやく声を知っている聴こえているけどだからなんなの




花が咲く悍ましい肉の花弁が微笑いそれらを踏みつけふたり睦む夜




何気ない日々というものはなかったよ君といる日々はすべてが愛しい




乳白の朝を迎えようやすらいだ午后ふたりでむずがる寝台揺籠




寒い日も暑い日もいつも寄り添おう皮膚の境目溶かして触れる




白い鍋スープを温めジャムをつくる愛と思い出ことこと煮詰め




喝采はなくてもいいのただひとり兄さんの笑顔それだけがほしい




妹よお前が生きるこの世界よろこびばかりを降らせてみせる




星をみたながれない星とどまって僕らの上でかがやいてくれ




低い寝息可哀いお前の生きている証そうっと触れた頬はまるくて




さあ、手紙を書こう滴る愛で綴る僕らの毎日を




こぼれてく光を僕が受けとめるあなたの吐きだすものそのすべて




くるりるくリボンを巻こう細い手首くるりるくるく離れないよう




手を繋ぐのもすきだけど服の裾を掴む歩きかたもすき




カレンダー捲るよろこびは確かだけれど火を焼べるのもしあわせだろう




出航だ何処までも行こう僕らの船は宇宙にだって漕ぎだしてゆける




白卵お前は雛鳥かわいい小鳥世界はお前のための青空




羽搏きの音に澄ませる耳など要らぬお前と共に何処までも飛ぶ




翼の駆動呼び声に従い飛ぶ 雲を越え宇宙惑星




菫いろのリボン砂糖に漬けねむる金の髪飾る星になれ




繋いだ手分断を越え橋を紡ぐこの惑星よりおおきな橋で




ロケットに乗りこむもしもひとり乗りならそいつを壊して新たにつくる




弾けない泡をもとめて日々を編む君と一緒ならいつかはきっと




夕暮れはこの胸あまく蕩かす誘惑。もうすぐはじまる僕らの航海





ぬばたまの夢をともに見、眼を閉じる我ら向かうは聖なる荒野





横顔はオーダーメイド神様はいない世界は兄さんと僕





名をくれたお前の微笑いがおれの幸福護るよたとえ世界を棄てても





飛びたつは呼吸のためだ小宇宙ばいばい世界われらは微笑う




おしまい





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